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香りと化粧品の深い関係。香りにこだわるコスメブランド
「香り」というと、今でこそ香水とかコロンだとかを思い浮かべますが、実は人類にとって初めての化粧品は「香り」だった、といっても過言ではありません。
実際、私たちは「香りがいいから私はあのブランドが好き」とか、「あのクリームは香りがよくて癒されるんだよね」とかいうように、私たちは無意識に香りで使う化粧品を選ぶこともありますよね。
そう、「香り」と「化粧品」には、切っても切れない関係があるのです。今回は、奥深い「香り」と「化粧品」の世界について見ていきましょう。
まずは壮大な「人類と香りの歴史」
まずは奥深い、人間と香りについての歴史です。「香り」の歴史は何と紀元前1000年よりも前にさかのぼります。
紀元前1000~3000年:人間はすでに香りを使っていた!
紀元前3000年ころの古代エジプトでは、すでに香りの成分がミイラづくりの材料として使われていました。香りの成分になる樹脂に「ミルラ(没薬)」というものがあり、ミルラから抽出された精油は現在アロマオイルとして使われています。
このミルラを古代エジプトでは、アロマオイルとしての用途の他に死体を腐らせないようにする防腐剤として使用されていました。さらに、この時代は病気は悪魔の仕業だと考えられ、その治療に薬草から作られたハーブが用いられていました。
紀元前1000年以上前の古代ギリシャでは、熱狂的な香りのブームが起こります。自分の身体や衣服にハーブから作られた香りをつけて楽しむのは当たりまえ。それどころか、自分の飼っている犬や馬にまで香料を塗りつけていたそうです。
紀元前70世紀ごろ:あの美女が香りの力で歴史を変えちゃった?
デート前には香水を欠かさない…という人は今でも多いと思いますが、香りを恋愛どころか政治にまで利用した最強の美女が、紀元前70世紀ごろに現れます。あの有名なクレオパトラです。
無類の香り好きだったクレオパトラは、バラを浮かべた香水風呂が大好き。しかもわざわざ遠く東洋から取り寄せて、香料をブレンドしていたというくらいの香りフェチ。
彼女があのカエサルやアントニウスと関係をもち、その後の歴史に影響を与えたことは、よく知られています。
クレオパトラは香りに含まれる、異性を惹きつけるフェロモンを上手に使い、男性を虜にしていたのかもしれませんね。
紀元1000年ごろ:アラビア人が「香り」を本格研究
その後ローマ時代へと移りますが、香りに関する研究は、ヨーロッパではほとんど発達しませんでした。「万物の作り主は神」とするキリスト教徒の多いヨーロッパでは、香りに限らず、「そもそも物事を研究する」ということが、どちらかというとタブー視されていたからです。
ではその時代、科学・学術の研究はどこで盛んだったのかというと…中東のアラビアです。紀元700年(900年という説もある)ごろ、アラビア人の化学者が、世界で初めて「水蒸気蒸留法」という方法を発明し、植物から「香りの純粋成分(精油)」を取り出すことに成功したのです。
この「水蒸気蒸留法」は酒の蒸留などにも応用されて、その後の科学技術の基礎になりました。
ちなみに日本の江戸時代、焼酎やしょうゆを作るときに「ランビキ」という器具が使われていたのですが、この「ランビキ」はアランビック、つまり「アラビアの」という言葉が語源なのです。
1500年ごろ:「香り」はイタリアからいよいよフランスへ!
ヨーロッパで香りの文化が花開いたのはその後かなりたってから。しかも、最初の出発点ではフランスではなくイタリアでした。フランスに香水の文化が持ち込まれたのは1533年のことです。
イタリア屈指の大貴族の令嬢、カトリーヌ・ド・メディチがフランス国王アンリ2世のもとへと嫁ぐのですが、このとき彼女が連れていったのが、イタリアにいた香水の調香師たち。
その後200年ほどかけてフランスでは香水文化が育まれ、1700年ころには、フランスのグラースという街が香水産業で大きく発展します。
どうしてグラースで香水文化が発展したのかというと、グラースはもともと皮革製品産業が盛んだったから。皮革製品を作るときはどうしても独特の匂いが出ます。その匂いを消すために、香りの技術が大きく発展したというわけです。
今でもグラースは、フランスの香水・香料の3分の2が作られる世界有数の「香水の街」として有名です。調香師の専門学校や香水の博物館などもあります。
1800年ごろ:フランスで「香りの文化」が発達
グラースが香りの街として有名になってまもなくの1800年ごろ、ヨーロッパに現れたのがナポレオンです。彼は「香り」の世界にも大きな影響を与えました。実はこのころ、「香り」は「薬」と明確に区別されていませんでした。
当時は香りも薬も植物から作り出していましたから、当時の人が混同したのも当たりまえですよね。でもナポレオンは歴史上初めて、「明確な根拠や製法がないものは『薬』ではなく、ただの『香り』である」と定義づけたのです。
つまりこのときに世界で初めて「医薬品」と「香り・化粧品」の区別が生まれ、両者はその後、別々の産業として発展していくことになります。ナポレオンは優れた政治家でしたが、同時に化学にも、先見の明を持っていた人物だったのですね。
1900年前後:あの「ゲラン」や「シャネル」が登場!
ちなみに香りの世界に大きな影響を与えたのは初代ナポレオンだけではなく、ナポレオン3世も同様でした。
海外コスメブランドとして私たちにおなじみのあの「ゲラン」ですが、そもそもゲランが有名になったきっかけは、ナポレオン3世皇妃の香水ご用達ブランドになったからです。
そのあとを追うように、1921年、ココ・シャネルが「№5」を発売します。ゲランもそうですが、シャネルやランコム、イヴ・サンローランなどなどの海外コスメブランドは、日本のブランドと違って香水から始まっているブランドが多いです。
1928年:「アロマセラピー」という言葉が生まれる
さて、ここでいきなり、ルネ・モーリス・ガッセフォセという、ちょっと耳慣れない名前のフランス人科学者が登場します。
研究中に負ったやけどをラベンダーオイルで完治させた彼は、植物の精油に治癒効果や防腐効果があることを確信して研究を続け、1928年に「アロマセラピー(芳香療法)」という本を出版。これが「アロマセラピー」という単語が生まれた瞬間でした。
その後、彼の研究は世界大戦の影響で埋もれてしまいましたし、彼の名前を知っている人は今でも少ないですが、私たち女性に大きな影響を与えていますよね。
今でこそ、私たちは「自然派ブランド&オーガニックブランド」と「そうじゃない普通のブランド」を分けて考えていますが、そもそも、ヨーロッパではどちらも「香り」の研究が出発点になっているのです。
現在~多くの先人のおかげで香りを楽しめる!
「香り」には実に奥深い歴史がある…というのがよくわかりますよね。多くのコスメブランドは長い時間をかけて発展してきた香りを、化粧品という形で利用しているわけですが…その利用の仕方もメーカーによってさまざま。
次からは、香りに特徴ある代表的なコスメブランドをチェックしてみましょう。
香りに特徴がある海外のコスメブランド
フレグランスの延長として考えている海外ブランド
海外コスメブランドの多くは、実は香水のブランドから派生したものが少なくありません。ですから、化粧品に配合する香りも「フレグランスの延長」として考えている傾向があります。どちらかというと香りが強い化粧品が多いのです。
といっても、ただ香りの強さだけを追求しているわけではありません。揮発性の違いによりおこる香りを強く感じる時間差「トップノート」「ミドルノート」「ラストノート」まで、しっかりと考えて設計されています。
また、専門の調香師がそのライン専用の香りを開発したうえで配合する、というスタンスのところがほとんど。もちろん香水ほど強く香りが残るわけではありませんが、お手入れの時間を華やかに演出してくれるのが特徴です。
皇室御用達から大きく発展した「ゲラン」
1828年に、初代のパスカル・ゲラン氏がパリに店を開いたことがきっかけで生まれたゲラン。その後、ナポレオン3世の皇妃ウジェニーに香水を献上したことがきっかけで有名になりました。
また、合成香料を利用した初の本格的な香水を作ったことでも大きな評価を受けます。
初代のパスカル氏は石けんづくりを学んだ人でもありました。そのため香水と同時に基礎化粧品の開発も手掛けています。
そして1870年、つまり日本でいうと明治の時代に、すでにニキビの赤みをケアするクリーム、今でも人気のあるあの「クリーム・カンフレア」を発売するまでになったのです。
ゲランのスキンケア最高峰ブランドといえば「オーキデ アンペリアル」ですが、このラインにはオーキデ(蘭の花)という名前のとおり、オーキッド(蘭)を初め、バニラやローズペダルなど、貴重な香りが惜しみなく使われています。
香水のシンボルをロゴマークにした「ランコム」
ランコムは、調香師のアルマン・プテジャン氏が1935年に5種類の香水を発売したことがきっかけでできたブランド。翌年発売したクリームが評判を呼び、わずか6年ほどで世界30か国にブランド展開するまでになります。
今でもラインごとに使う香りを変えていて、それぞれの香りを調香師が設計しています。
最高峰のスキンケアブランドは「アブソリュ」ですが、このラインはランコムのシンボルであるバラ(ローズ)をメインに、ムスクやサンダルウッドなどを配合した香りになっています。
帽子と洋服、そして香水から化粧品へ発展した「シャネル」
シャネルの出発点は何と「帽子」。あのココ・シャネルが第一次大戦前に帽子の専門店を開いたのが始まりです。
その後世界のオートクチュールブランドとして成長したシャネルは、やがて香水を発売します。それが有名な「№5」。試作品の番号から取られた名前でした。
化粧品が本格的に発売されたのは、ココ・シャネル本人が亡くなってから4年後の1975年のこと。他のブランドに比べるとちょっと遅いのですが、その後コスメ業界で目覚ましい発展を遂げます。
最高級のスキンケアブランドとしては「サブリマージュ」が有名ですよね。リンデンやシクラメンなどを使った、単なるフローラルテイストとは違う高級感ある香りが特徴です。
香りに特徴がある日本のコスメブランド
「まず研究」というのがいかにも真面目な日本ブランド
海外のブランドが調香師たちによって開発されているのに比べると、日本のブランドは「香りを徹底的に研究して客観的なデータを出し、効果が実証されてから化粧品に応用する」というところが多いのが特徴です。
実際、日本のブランドでは、脳波や心電図測定図を使って香りの効果の検証実験をしているというメーカーもあります。
海外ブランドはどちらかというと「香りに対して感覚的」なのに比べ、日本のブランドは「香りに対して客観的」という感じかもしれません。
いずれにしても今の日本の法律では「香りのスキンケア効果」を明記できないので、せっかくの貴重な研究であるにもかかわらず、「香りによる効果」をほとんどうたえないのがじれったいところです。
多様な香りのスキンケア効果を研究する「カネボウ化粧品」
実は、カネボウ化粧品は香りの研究ではかなりこだわりをもっているブランドです。「嗅いで心地いい」というだけでなく、美白効果や抗酸化作用など、「成分そのものに高い美容効果がある香り」について、精油やハーブの研究が行われています。
それらの成果は実際の商品にも応用されています。たとえば「キッカ」には、抗酸化作用とリラックス作用が実証されたサフランをベースにした香りが採用されていますし、「インプレスIC」では、同じく高い抗酸化作用が実証されたローズ系(バラ由来)の香りの成分を使っています。
香りに特徴あるブランドを数多くもつ「資生堂」
日本最大のコスメブランドである資生堂も、香りの研究では負けていません。「香りが能や心にもたらす影響」を科学的に研究し、膨大なデータを分析していることでも知られています。
たとえば「人工的に肌あれを起こさせ、香りを調整した環境下で回復率を測定する」といったような、極めて科学的な方法で香りの力を分析する手法が取られているのです。
そういった地道な研究が応用されたラインとしては「キオラ」、そして系列ブランドの「ディシラ」が有名です。
「キオラ」には「嗅ぐだけでストレスが軽減する香り」として開発された「DH-EA」という香りが配合されていますし、「ディシラ プレドミナ」には、女性モルモン機能の不調に効果があるとされている、「スイートオレンジ」の香りが使われています。
また資生堂の覆面ブランドではありますが、通販専用の「草花木果」は、大手ブランドには珍しく、すべて天然香料、つまり精油だけで香りづけをする試みがなされています。
香りのストレス解消効果に着目している「コーセー」
コーセーも香りに関する研究を多岐に行っているブランドですが、それが大いに活かされているのが、ストレスによる肌トラブルの軽減をかかげる「アウェイク」。採用されているのはヒノキ科の木から抽出したサイプレスオイルの香りです。
実際にサイプレスの香りを分析し、心を落ち着ける効果があることを実証したうえで配合しています。よくあるフローラル系の香りと違って、樹木由来ならではのすっきりとした香りが何ともいえません。リピーターも多いそうです。
香りに特徴がある自然派コスメブランド
加工しない精油や天然成分を使う自然派ブランド
自然派と呼ばれるブランドは、精油もしくはハーブなどの天然植物成分が香料となっているわけですが、主に次のふたつのケースがあります。
ひとつは「スキンケア効果を追求するために複数の精油や天然成分を入れていたら、結果的に香りがよくなった」というケース。もうひとつは、「香りによる心理効果に着目して、わざわざ香りのいい精油やハーブを配合した」というケースです。
いずれにしても防腐剤や安定剤を使用していないので、長く置くと香りだけでなく品質も変化してしまいますから、買うときには使用期限を確認することが大切。そして、開封したらなるべく早めに使い切るようにしましょう。
ラインによって香りが違う「ニールズヤード レメディーズ」
「ニールズヤード レメディーズ」は1981年にロミー・フレイザー女史によって作られた自然療法薬局が出発点。ラインによってすべて香りが違うのが特徴ですが、ただむやみに変えているわけではありません。
「香りが心に与える影響によって肌機能を整える」という考え方のもと、目的によって配合する精油や天然成分を選んでいるのです。
たとえばエイジングケアを目的にした「フランキンセンスシリーズ」には高い抗酸化作用のあるフランキンセンスオイルを、美白目的の「ホワイトティシリーズ」には、ホワイトティのエキスを配合しています。
ボディ用のオイルが人気の「エフェクティブ オーガニック」
日本人が開発したオーガニックコスメブランド「エフェクティブ オーガニック」は、使う目的とタイミングによって、配合する精油を変えているのが特徴。
たとえば夜使うクレンジングにはリラックス効果のある精油、リフトアップ美容液には活性効果のある精油、といった具合です。
また、一見するとキャンドルのように見える、溶かして使うボディ用のトリートメントオイルも人気。こちらは「ストレス」や「デトックス」「スリム」など、何と目的別に5種類もそろっています。、もちろん香りはすべて違います。
創設以来徹底してこだわってきたのが「オレンジフラワーウォーター」。ローションやクリーム、パックなど、ほぼすべてのスキンケア全品に配合しているので、どれもほのかに甘い香りが漂います。もちろん人工的なものではなく、天然由来の香りです。
ベースになっている水がほのかに香る「ポール&ジョー」
自然派コスメとはちょっと違うかもしれませんが、アルビオンの系列ブランドである「ポール&ジョー」も、植物由来の香りという点では見逃せないブランド。
使うときにゆっくり深呼吸して楽しんで
いかがでしたか?普段私たちは化粧品を使っていて、「あ、この香りイヤ」とか「この香り大好き!」とか、何気なく感じたりしますよね。でもそれは、そのブランドや製品を開発した人たちの並々ならぬ情熱の結果でもあるのです。
あまり実感できないかもしれませんが、香りが心、そしてスキンケアにもたらす力は絶大なもの。嗅覚は脳と直接つながっているただひとつの感覚ですから、香りを脳に届けることで、効果がより増幅されることだってあるのです。
ときには、普段使っている化粧品を、「香り」という観点から、じっくり味わってみてはどうでしょう。