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名品に歴史あり!あのヒットコスメの隠された感動ストーリー
発売からもう何年もたっているのに、いまだに人気が衰えないコスメってありますよね。今回はそんな「名品」を4つ取り上げて、誕生した背景やきっかけについてお話ししましょう。
もう長年愛用しているという人も、隠されたエピソードを知ればまた違った思いがこみあげてくるかもしれません。
コスメデコルテの「化粧液」
コスメデコルテの「化粧液」といわれてもピンと来ない人が少なくないかもしれません。でも、コスメデコルテの「モイスチュアリポソーム」といわれれば、ああ、あの美容液ね、とわかる人も多いはず。
実は「モイスチュアリポーム」の正式な商品名は、単なる「化粧液」なのです。
「モイスチュアリポソーム」が発売されたのは1992年。もともと医療用に開発されたカプセル技術を、どうにかして化粧品に応用できないか…と研究に研究が重ねられ、何と8年もの歳月をかけて開発された美容液でした。
諸説ありますが、「化粧液」という商品名で売り出されたのはなぜかというと、「リポソーム」という名前にすると薬事法にひっかかるのではないか、とメーカーが危惧したから…という説があります。実はリポソームというのは生物学用語で、細胞内部に浸透できる構造をもつ複合体のことをいいます。
ところが、化粧品というのは、薬事法上では薬ではありません。そもそも化粧品は薬と違って「肌の奥深くに浸透するほどの効力をもってはいけない」と法律で決められていますから、威力のある浸透力を連想させるような名前はマズいだろう、ということになったのです。
仕方なく正式な商品名として「リポソーム」という名前をつけるのは見送られましたが、リポソーム技術を化粧品に応用したのは当時とても画期的なこと。
何とか名前を残したい…ということで、パッケージに「リポソーム」とロゴを入れ、通称だけでも名前を残るようにしたといわれています。
ちなみにリポソーム技術は、上でもお伝えしたように、もともと医療用に開発された技術。直径わずか0.1ミクロンのカプセルのなかに、何重にもカプセルが重なったような構造になっています。
肌の奥に浸透するにつれ、玉ねぎの皮がむけるように成分を放出しながら浸透していく…というシステムで、当時とても衝撃的でした。発売から20年以上たつ今でも大ヒット中。その効果と実力がわかりますよね。
ロクシタンの「シアバター」
「ロクシタン」が設立されたのはオイルショックの興奮がまだ冷めない1976年。創設者のオリビエ・ボーサン氏が古い石けん工場を利用して、オリジナルの石けんを作り始めたのがきっかけでした。
その4年後、ボーサン氏は西アフリカの共和国・ブルキナファソで初めて、シアの木と出会います。シアの木は、現地では「神秘の木」としてあがめられていて、シアの木に触ったり、実を収穫したりできるのは女性だけという決まりがあります。
このシアバターの強力な保湿力に驚いたボーサン氏は、さっそく自分の製品にシアバターを取り入れることを思いつき、現地から大量に買いつけます。ところがヨーロッパの女性たちが抵抗なく使える使い心地にまで精製するのは難しく、すぐには製品化できなかったそうです。
ボーサン氏は研究を重ねました。そして1982年、まずシアバターを配合した石けんを作ることに成功。そしてその後7年かけてさらに研究を続けて、1989年やっと純度100パーセントの「ロクシタン シアバター」を製品・販売することに成功します。
全身どこにでも使えるマルチぶりが大受けし、ロクシタンはフランスで一躍人気になります。日本にロクシタンが上陸したのは1997年ですが、それ以前から「ロクシタン シアバター」はパリ土産として日本人女性にも知られていましたから、日本でもすぐにヒットしました。
香港やニューヨークにも店舗が増え、ロクシタンは世界じゅうで愛されるブランドになっています。そうなった今も、ロクシタンはブルキナファソの女性たちから直接シアの実を買いつけることで、現地の人たちの現金収入や植林資金の確保に貢献しています。
資生堂の「クレ・ド・ポー ボーテ ラ・クレーム」
「ラ・クレーム」といえば、クリームのなかでも超有名、まさに名品中の名品です。これを使っている芸能人やキャスターは数知れず、長年絶大な人気を集めてきました。
「クレ・ド・ポー ボーテ」は、最初は「クレ・ド・ポー」という名前の、単なるアンチエイジングラインでした。今のようなラグジュアリーブランドではありませんでしたが、誕生当初からラインのなかには5万円のクリームがすでに含まれていました。
その後「コスメデコルテ」「ポーラB.A.」のようなラグジュアリーブランドが増えるにしたがって、「クレ・ド・ポー」も、1996年に高級化へと路線を切り替え、名前も「クレ・ド・ポー ボーテ」に変わります。
そのタイミングで「クレ・ド・ポー ボーテ ラ・クレーム」として売り出されたのが、初代のラ・クレーム。英訳すると単に「ザ クリーム」というシンプルな名前と、当時5万円という、悪くいえばちょっと高飛車、よくいえば自信の裏返しともいえる金額が、多くの女性たちに衝撃を与えました。
それ以降、「ラ・クレーム」は人知れず数多くのリニューアルが行われてきました。発売から11年で中身の強化は何と計5回。ただ、それをおおっぴらにしなかったのもラグジュアリーブランドならではの心憎いところで、実は長年パッケージのデザインはほとんど変えていませんでした。
ところが2007年のリニューアルではパッケージを一新、さらにその後もう一度リニューアル。中身の強化はもちろんですが、そのタイミングで、ラグジュアリーブランドにもかかわらずリフィル対応にするという、驚きの進化を遂げます。
「クレ・ド・ポー ボーテ」は資生堂を象徴するブランドですし、なかでも「ラ・クレーム」は中核をなすアイテム。ですから効果だけでなく、ゴミの軽量化や地球環境への配慮など、企業としてのスタンスを製品に盛り込んだ…ということかもしれません。
香料にも、資生堂としては初めてフェアトレードで調達された原料を採用しています。
ドゥ・ラ・メールの「クレーム ドゥ・ラ・メール」
高級コスメブランドとして昔から有名な「ドゥ・ラ・メール」ですが、意外にも生みの親は航空宇宙物理学者。一部ラボに名前が残っているので名前を聞いたことがある人もいるかもしれませんが…マックス・ヒューバーという男性です。
実験中の事故で大やけどを負ったヒューバー氏は、どんな医者にも治せないといわれたやけどの跡を何とかしようと、自分でクリームの開発に乗り出します。
さまざまな成分や植物を探した結果、ヒューバー氏が出会ったのがカリフォルニア・サンディエゴ沖に生息する「ジャイアント・シーケルプ」という海藻。
この海藻がもつ成分に着目し、その効力を最大限に生かす方法を見つけるため、ヒューバー氏は何と12年の歳月と6000回の実験を重ねたそうです。
そして彼が行き着いたのが、「ジャイアント・シーケルプの成分にユーカリやライムなどを加え、特殊な音と光を当てながら低温低圧で3~4か月発酵させる」という方法。通常、化粧品の美容成分は「高温高圧・短時間」で抽出されるのがほとんどですし、音と光を当てるなんて、普通はめったにありません。
ですからヒューバー氏が考えた抽出方法は唯一無二、世界でもたったひとつの製法といえるかもしれません。こうしてできた成分は「ミラクル ブロス」と名づけられ、クリームに配合されます。
こうしてできたクリームは、最初はヒューバー氏や彼の身近な人だけが使っていましたが、その効果が評判を呼び、やがて「クレーム ドゥ・ラ・メール」として売り出されるようになります。「ドゥ・ラ・メール」とは、フランス語で「海からの」という意味。ヒューバー氏の、成分へのこだわりがよくわかる名前ですね。
ちなみに原料として使われる「ジャイアント・シーケルプ」を採取できるのは、1年のうち限られた時期だけ。しかも新芽だけを使っています。そのうえ今でもほとんどの製造過程は手作業だといいますから、値段が高いのも納得です。
名品には、やっぱりきちんとした理由がある!
日本はコスメ先進国ですから、毎年次から次へと新製品が登場します。にもかかわらず、埋もれることなく愛され続けている名品には、やはりそれだけの理由がある…ということでしょうか。
長年の試行錯誤や苦労がなければ、こういった商品を作ることはできません。「ちょっと高いから手が出ない…」という人も多いかもしれませんが、次にどこかでこれらの商品を見かけることがあったら、今に至るまでの功績を作り上げた人たちの汗と涙に、ぜひ思いを馳せてみてください。